久しぶりにピースを吸う |
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| 本当に汚い机の上から濃紺の小さな箱を発掘する。 両切りピースである。
両切りピースを吸うきっかけになったのは、死んだ爺さんの話である。 元々はクリィム色のロングピースを「甘い良い香りだなぁ」と吸っていたのであるが、嗅覚がイカれてきたのか、他の煙草に浮気して改めて吸った時にそのような甘い香りを感じる事が出来ず、「???」となってしまった時に、死んだ爺さんの話が思い出され、両切りのピースを吸い始めたのであった。
爺さんはずっとキャスターを吸っていて、(煙草が原因の奴ではないが)肺ガンになってしまい、それが原因で死んでしまったのであるが、最初発見したときは小さな癌で、すぐに手術をして「とりあえず一安心」という時にワシと煙草の話をした事があった。(その後、転移が見つかって、あまりに細かく散って転移していた為に手術が出来ず、死んでしまった。) その時は当然煙草をやめていたのであるが、店で煙草を売るときには調査する人が来て、店の間口がどのくらいの広さで、出入り口が何センチで、周囲の煙草を売ってる店は何メートル離れていて・・・と意味不明なほど細かく調べられた、とか、「ウチは一度酒の密造をして捕まった事がある」とか、まぁ、面白い話が色々あったのであるが(もっと面白い爺さんの(失敗談臭い)話は死後にばぁちゃんと親父と叔父さんから聞いた。) で、その中で、(まだワシは煙草を吸って間もなかったから)「おじいの一番旨いと思う煙草は何?」と聞いたところ、「キャスター」と答えられるかと思いきや以外にも返ってきた答えは「缶ピース」であった。 話によれば、友達と飲み屋に飲みに行ったときに、隣の席に座っていた知らないオッサンの煙草がやたらいい匂いであった、と。で、爺さんは「何の煙草だろう」とチラチラ観察していたところ、そのオッサンの改造されたと思えるベルトには缶ピースが両脇に一つずつ括り付けられており、そこから取り出しては一吸いか二吸いだけ吸って、次々に捨てていたそうな。で、当時の爺さんは感心したらしい。 で、ワシに「確かに根本まで吸うと味が濁るだね。だはんで、本当の味ば求める煙草喫みっつーものは、缶ピースみてぇな両切りの煙草を、味が濁らねぇようにスッと吸って、パッと投げるようでねばマネんだね」と謎のレクチャーをしてくれたのであった。 「じゃ、おじいはなんでピースでねくてキャスターだったの?」と聞いたところ、「キツイから。健康にも良くないし・・・」と。 という事で僕は爺さんの棺に「良い香りが残っていて、しかも幾分健康に配慮して」クリーム色のロングピースと、普段吸っていたキャスターマイルドを入れたのであった。
で、今日吸ったピースは久しぶりに、甘くて(少し舌にキツイ)旨いピースでした。
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1月31日(水)00:23 | トラックバック(0) | コメント(0) | 無題 | 管理
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